「出会い」に不思議はあっても、
「別れ」に不思議はない.....
今年、したしいお寺さんがお亡くなりになりました。
十年あまり、とても「おもしろ、おかしいおつきあい」を
させていただきました.......。
観光寺院さんなんです。
趣(おもむき)のあるお寺で......
ご老僧様の几帳面さもあって、
落葉ひとつない、
とても清々し庭園を保たれていました.......。
.....思い起こせば、
ご老僧とのお話し.......
「今度持ってくる時は、これより少し軽く作っておくれよ.....。
日に日に、握力が無くなってきて......、以前のように重いものは
持てなくなってきたよ。
柄の方を思いっきり軽くていいものをたのんだよ、ね.....。」
と、ご老僧様。
納品に寄せていただくと、決まって渋茶と落雁(京の押菓子)を
頂戴しました。
しばらくの間、いろいろなお話しされました
.........
「奥(奥様のこと)がおらんようになってからは、夜になると、話し相手
がなくて.....暇でしょうがないよ。
本を読もうと思うが、読んでいるうちに、すぐに「ねむとう(眠く)」な
ってしまう。
だから、朝早く起きて、
庭を掃除しながら、樹木に会話するんじゃが......
やっぱり、話しかけても、何も返ってこん~~こりゃ、あたりまえじゃが
な.....。」
「身近なひとがいなくなると、なんか~つまらない。
生身の人にあれや、これやとしゃべらんとな~.....とこの歳になって気がつ
いた.....まあまだ、修業がたりんかな~?」
とご老僧さま。
........また、こんな話しも、
「おうどんを食べようとしていたら、
急に電話がかかってきて、
あれよあれよと30分も話して、しもたよ.....。
終わったら......
のびて、のびて、きし麺みたいになっておった。
.....でも、もったいないからと食したが
まあ、......うまくなかったな~。」
「おうどんもちゃんと成仏させてやらんと、いかんからな~」
.....南無.....。
そうそう、えらい猫の話しでは.....
「嘘じゃないぞ~
庭に、どこからかやせた黒ぽい野ら猫がやって来たんじゃ。
あんまり男前の猫じゃない感じじゃったが......
その猫、庭の小高くなった処にやってきて、キョロキョロ。
用をたそうとしたんじゃな.....
そう思ったので、
「やめておくれよ!」
と声を出してしもうた.......
すると....なんと、なんと!
......その猫が軽く会釈したかと思うと、す~と、お庭を後にしたん
じゃよ。
杉苔に猫のおしっこは大敵! 杉苔がすぐにこげ茶色になってしま
うから、.......「杉苔」を守ってやりたかったんじゃ!
「どんなものでも心はあるんじゃよ.....!」
....もうひとつだけ、お話しを、
「私くらいの歳になってくると......時折、夢うつつで.....
阿弥陀様とお話しさせていただくことがある......。
もう少し頑張ってみようかと思うのですが.....どうも、身体の方が思
うようになりません。身体の方を何とかしていただけませんでしょう
か?.....と、お願いしてみました。」
阿弥陀様から....
『まだまだ、成すべきことがあるのでは?』
と、いただきました。
で、
私のできることといったら......
自坊の「お庭をきれいにする」ことぐらい。
最後の「おつとめ」と思って、頑張ってみょうと心に決めたんじゃよ。
阿弥陀様とのお約束じゃからな......。
「がんばりすぎない程度に、がんばってみるか!」
さあ、さあ、
「だから、早いとこ作って持ってきておくれよ!!」
「はい!」
「でも、和尚さんは、まだまだ、元気、元気!」
.....「そりゃ、わからん! 阿弥陀さまのお心次第じゃ......
だから、たのんだよ!」
どんなひとでもものでも、
出会いは「不思議なもの」です.....。
けれど....
別れは「必然」ですね。
必ず、.....やってきます。
「不思議」はないようです......。
......そんなことを、感じました。
ご老僧さまのご冥福をお祈り申し上げます。
で、
ご老僧さまの「お気に入りの一品」が.....これ。
超軽量(約400グラム)の竹ほうき。主に杉苔庭園などでご利用。
柄の長さ、太さはオーダーメイドです。
「むらさきしきぶ(紫式部)」という名がついています。
.....いつでもベストのモノが「お納めできるように」素材管理に
は充分留意しております。
よかったら.....どうぞ。
また、また。